保育士として働く人の悩みとして4人に1人が挙げている不満「給料が安い」

テレビのニュースでその薄給ぶりが話題となるほか、ツイッターなどのSNSでも異常に安すぎる給与を晒す方も出てきた影響があり、社会現象にまで発展しました。

 

しかし、他の福祉業界でもブラックと言われる業種は多数あります。

それら他の業界と比較して保育士の給料は安いのか?

保育士の給与が少ないと言われる真の理由は、どこにあるのか?

そして、保育士の給料が安い原因は、一体誰のせいなのか?

 

その原因について見ていきたいと思います。

 

保育士の給料が安いのは本当か?他業種と年収を比較

 

上の画像は、各業種別の年収比較です。

他の業界を見てみると、電気・ガス・熱供給・水道業と、金融業・保険業の給料の高さが伺えます。

 

第一に、利益を出すために存在する一般企業と補助金頼みの福祉業界、という違いもある

 

保育士の年収と他の業界の年収を比較する前に考慮すべき点として、まず金融や保険といった仕事は、お金儲けが目的、つまり数字だけを常に追い求めている特徴があるという点を忘れてはいけません。

商売をはじめて、お金儲けが成功すれば、そのお金は全て自分の企業に返ってきます。

 

その代わり、金融業のエリートたちは、周りのライバル社を潰してでも利益を上げなければなりませんし、数字が上がらなければ即リストラ。

社内の人間までも蹴落として結果を出さなければならないという世界で生きています。

 

そのため、売り上げ・数字のみが全ての金融・保険業界と、補助金頼みの福祉業界の給料を比較することは筋違いともいえるでしょう。

 

 

逆に、他の業界と比較して給与の安さがうかがえるのが宿泊業・飲食サービス業、農林水産・鉱業、サービス業です。

飲食業やサービス業の年収が低い事は、なんとなく世間のイメージ通りですが、上の図は非正規雇用も含まれているため、さらに給与格差が出ているものと思われます。

 

一つ付け加えるとすれば、サービス業は売上以上に「この仕事が好きだから」という理由で就職する方も多いです。

その上、時には利益と相反するようなサービスを展開し、それを良しとする会社もあります。ホテルや旅館などがその例の1つといえるでしょう。

 

しかし、飲食業は正社員・非正規雇用・アルバイトともに職場環境も悪く、賃金も低いと話題になります。

これは「変わりはたくさんいるし、誰でもできる」「学生・20代のような若い人間が中心」というイメージが強く、時給が安く設定されていることが原因の一つだと思います。

利益を追求する会社に正社員として就職し、低い待遇で働かされている人の環境は、気の毒だと言わざるを得ません。

 

 

一方、保育士の平均年収は約320万円とされています。(2017年現在での数値です)

上の業界別年収表と比べてみても、下から数えた方が早く見つかる金額なので、やはり給料が低めというのは間違いないようです。

 

ただ、同じく国からの支払いや補助金によって運営する医療業界の看護師は、比較的給料は高いとよく言われます。

そこで、次に国からの援助で運営する福祉・医療業界の年収を比較してみましょう。

 

保育士の給料と福祉業界の給料を比較 意外と賃金が高いパートとアルバイト

 

 

次に、保育士の給料と他の福祉業界の給料を比較した表を見ていきたいと思います。

 

まず、目につくのが看護師の給料の高さです。

その給料の高さと職の安定感からも、人気の看護師。

1時間当たりの短時間労働の賃金でも、1600円以上はキープしているという高さなので、正規・非正規共にお金には優遇されている職業だというのが分かります。

 

 

対して、保育士よりも低い職業としては福祉施設介護員・ホームヘルパーがあります。

今は保育士が取りざたされているため、介護職員の話題が大きくなることは少ないですが、介護職も重労働・低賃金で問題視されている職業です。

 

ホームヘルパーの場合、一時間当たりの賃金になると、1300円以上と途端に時給が上がるという特徴がありますが、雇用条件を全て含めた平均を取ると、保育士を下回ります。

賃金の安さが目立つ保育士や介護士ですが、パートを含めた短時間労働での勤務形態では、他のサービス業よりも高い賃金を期待できるというメリットはあります。

 

その反面、フルタイムや派遣などで働く場合、職場によって待遇に大きくバラつきが出ることが予想できます。

中には、賃金の安さに加えてサービス残業や持ち帰り仕事が多いせいで、アルバイトの方が割が良いという逆転現象が起きてしまうケースもあります。

 

保育士の給料が安い理由は「いつまで経っても昇級しない!?」

 

業界別年収や福祉職との年収比較を見てみると、保育士の給料が比較的安いのは間違いないということは分かりました。

 

しかし、その一方で、保育士の他にも給料が安い職種は意外にも複数ありました。

それでは、なぜ保育士の給料が安月給だと言われ続けるのでしょうか?

 

 

 

その理由の回答として、大きく騒がれていた出来事があります。

SNSで公開された勤務10年以上のベテラン保育士の給与明細です。

 

その保育士さんは、保育士35年目の大ベテランで、現在務めている民間保育園には25年在籍している主任保育士です。

その主任保育士の給料が、なんと手取りで18万円

その上、主任手当の3万円を加えての金額で、ツイッターで自分の給料をアップしたこちらの主任保育士さんは男性保育士さんでもありました。

 

 

一般企業で働くサラリーマンや公務員であれば、実力での差はあれど、在籍年数によって多少は昇級していくのが通常です。

以下、年齢別の平均年収をグラフにしたものが公開されていますが、パッと見ただけでも年齢を重ねるにつれて年収も増えていくことが分かります。

(女性の給与が300万円以下になっているのは、非正規雇用、パート・アルバイトで働く女性も含まれているからだと考えられます。)

 

昇給が完全に給与の仕組みに組み込まれている公務員保育士さんは問題ないのかもしれません。

しかし、民間保育施設で働く保育士さんの場合、自分の経験や責任の大きさが給料になかなか反映されない点も、大きく問題視されるようになりました。

 

「頑張ってるのに給料上がらない!」保育士の昇給制度は変わるのか?

 

 

そこで、これまで問題を解決すべく、政府は保育士のキャリアアップ制度を導入し始めました。

勤務年数の多い園長先生・主任保育士を頂点にして、その下に熟練の保育士さんを優遇していくというピラミッド構造になっています。

つまり、保育士としてのキャリアを積めば、自然とお給料もアップするという仕組みになっています。

 

 

もともと、海外では自分のキャリアアップに合わせて給料を上げていくシステムを導入している国もたくさんありました。

 

しかし、「子供の世話は家で女がやるもの」という文化が育ってしまっていた日本では、国が問題視せず、本腰を入れて対策していなかったのです。

保育業界に長く関わってきた保育士さんや専門家の方もインタビューでおっしゃっていましたが、今の日本に必要なのは、保育が現代の日本にいかに重要かを理解できない「文化」を変えることだということでした。

 

補助金さえ支給されれば、保育士の給料も上がるのではないか?という意見

 

後述しますが、保育園の財源は国の補助金で成り立っています。

いかに保育が日本の将来に重要なのか?

その点を国民全体が理解しなければ、財源を保育業界に充てることも叶わないのです。

 

言い返せば、保育園への補助金が増えれば、その分保育士も優遇されやすくなり、劣悪な待遇も改善します。

 

しかし、そこに大きな問題があるのも事実です。

その問題のせいで、補助金を支給するどころか、カットしなければならない場面にさえ陥っているのです。

それでは、次に保育業界の闇が深い保育施設の財源について見ていきたいと思います。

 

「保育士の給料に還元してよね!」保育園の助成金の使い方が年収に悪影響

 

実は、保育士へ充てられる補助金の金額は、年々上昇傾向にあります。

それは、上の図を見ても一目瞭然です。

 

注目すべき点は、平成29年度で増える補助金の使い道は「保育士の待遇改善」に焦点を当てた点です。

給料だけ見ると、保育士は幼稚園教諭と同じ水準にまで上がります。

幼稚園の先生からすると、少し複雑な心境かもしれませんが、認定子ども園が増加して差が小さくなっているという背景もあります。

 

つまり、他の福祉職や年収が低い業界の人々には少々気の毒ではありますが、保育士の給料の安さ・待遇は今後さらに改善していくでしょう。

 

 

ただ、改善していく予定にはなっているのですが、ここまで来るまでの間、助成金を巡る大きな問題がありました。

いえ、それどころか、まだその問題と向き合い続けなければならないのが現状です。

 

その問題とは、保育園運営者による補助金の貯めこみや、助成金の不正受給です。

 

「補助金でベンツ買おう」補助金が保育士の給与にまで落ちてこない

 

 

保育施設の運営にかかる費用は、実際に子供の世話をする保育士さんたちの人件費が8割です。

つまり、保育所を運営していこうと思ったら、集まったお金の7~8割は保育士さんの給料に使わなければ、保育園で働く人は十分なお給料をもらえません。

 

しかし、ひどい保育施設運営者の中には、人件費を5割程度までカットしている園もあると言います。

とりあえずは、もらった補助金を正しく使えば保育士の年収が平均の320万円を大幅に下回る事などないはずです。

 

 

以前、ある保育所の運営が悪いという事でテレビで流れされた保育施設がありました。

そして、運営者の所有物としてベンツ等の高級車が写っていたのです。

かの有名な大阪の橋本元知事も、福祉業界が金をたくさん貯め込んでいるという現実を目の当たりにし、補助金をカットしたという実話があります。

 

 

もともと、運営側がしっかりしていれば、保育士の給料はそこまで問題視されることは無かったという声も多いです。

 

今まで補助金が減ることもあった理由。

それは、運営者が身勝手な方針で金を巻き上げ、自分の懐に貯め込んでいたということも影響しているのです。

 

昔の制度が尾を引いて経営難に陥る保育園も

 

余談ですが、昔の補助制度が尾を引いて経営難に陥る保育園もあるようです。

昔は、今よりもずっと補助金が多く出ていた時代もあり、その時代に雇われた人間が高給取りのまま居座っているというケースです。

 

新しい保育士さんを入れて、きちんと運営していきたいというのが本音ですが、今在籍している正社員の給料をいきなりガクンと減給させるわけにもいかない、というわけです。

 

 

今の時代、保育所の問題を片付けようと国や地方公共団体が大きく動いています。

日本全体が変化しなければいない時に、今までひっそりとやってきた園の存在など、政府としてあまり考えている暇はないでしょう。

昔から経営していた地元の保育所の経営が急に大きく傾いたり、いきなり潰れてしまうのには、こういった背景もあります。

 

保育園への助成金の不正受給はスゴイ金額

 

もう一つ、企業主導型保育による助成金不正受給があり、こちらは現在進行中で大問題となっています。

 

企業主導型保育施設とは、会社が自分の組織内で働く従業員の子供を預かるために設立された保育所の事を言います。

企業主導型保育と認定された保育園は、認可保育園並みの助成金を受け取ることが可能です。

 

東京都の場合、企業主導型保育施設には1施設当たり約2600万円が支給されるほか、0歳児保育は月月30万円、病児保育で534万円も補助金が支給されます。

 

また、企業主導型保育施設は2016年以降に開設した園が対象になります。移転した園は対象になりません。

しかし、開設の費用もまた、最大4/3(上限8000万円)の金額が助成金として出るという、優遇されつくした制度です。

 

 

この制度を悪用し、もともと認可外保育園だった保育施設が、新たに設立したように見せかけた保育所に園児やスタッフを移動させ、莫大な補助金を受け取り続けるという事件がおきました。

 

その他、預かっている幼児・子供やスタッフの人数の改ざんなど、保育施設の不正受給の方法はたくさんあります。

 

 

保育施設に限らず、福祉業界というのは、国からお金を簡単に支給できるという特徴があるために、こうした詐欺まがいの行為を働く人が多いです。

結局、その汚い実態を発見した真面目な人が、最終的に助成金取りやめ・補助金カットを実行に移すというわけです。

 

 

「保育士として何年も働いているけれど、給料が上がらない。」

「もっと高い給料を払ってもらわないと、生活していけない!やっていけない!」

「何で毎日厳しい待遇で仕事しているのに、補助金までカットされちゃうの?」

 

保育士の不満や疑問が聞かれることもなく、教えることもなく、不正受給とその問題を解決する対策は繰り広げられていました。

 

保育士の給料が安い真の理由は、内部にアリ!?

 

 

ここまで、保育士の給料が安い理由について、他の業界との比較や保育施設内部の問題を見てきました。

今は日本全体が不況ということもあり、一概に保育士だけが安月給というわけでもなく、だからといって、敵は国のお偉いさんだけではなく、実は保育施設の運営者、つまり内部にもいるということが分かりました。

 

 

「給料が安すぎる!もっと待遇を改善しろ!補助金を増やせ!」

 

という声が非常に大きくなったため、保育士の待遇改善はさらに勢いが増しています。

 

ブラック保育園で働く保育士さんのSNSを見ると、現実は大変そのものです。

しかし、反応の中には「私の所は給料も休みもあってのびのび働いているよ」とアピールする保育士さんも徐々に増えてきたように思います。

 

今の日本では、待遇も職場環境も悪い保育園で働き続ければ、それ以降収入が高くなる可能性は低いです。

つまり、「保育士として給料が高い保育園・認定子ども園で働きたい!」ということであれば、自ら高い給料で雇ってくれる保育施設を探しだす必要が出てくるでしょう。

 

 

今後、インターネットを介した情報交換は大きく発展していきます。

自分の将来は自分で明るくするためにも、今後保育士として働くなら自分で良い就職先を見つける必要があることをしっかり認識しなければなりません。

 

現状に悩む・別の保育施設に転職したい・再就職を検討中…そんな保育士さんに知ってもらいたい「転職の真実」とは?

 

「保育士が苦しいのは当たり前」な時代はもう終わったって知ってます?保育士も二極化の時代に乗り遅れるな!

これまで「保育士が[キツイ・汚い・安い]の三重苦の仕事なのは当たり前」と見られる風潮がありましたが、すでに保育業界も二極化の時代に突入しています。

もう少し詳しく言うと、「辛くて給料安いのは当たり前だから」と当然のように保育士の待遇が悪いままにしている保育施設と、「働く環境を整えなければ、将来のための良い保育も出来ないし、保育士も育たない!」と考え、積極的に待遇改善へと動く事業者に分かれてきているのです。

保育園も、内外両方から見て魅力ある「本物の保育所」だけが選ばれる時代がやってきているのです。

この流れは今後ますます強くなっていくことは明白です。

つまり、あなたが今、自分の待遇や職場環境に大きな不満があっても、その場にとどまり続けていては、苦しい状況はずっと続くのです。

一方で、就職で良い職場に入れた保育士さんや、自分に合う保育所を探している人には、明るい未来を掴み取る可能性があります。

 

もし、あなたが今の環境に不満を持っていたり、これから保育士になろうと考えているのであれば、真剣に自分にマッチした保育士求人を探してみてはいかがでしょうか?

他の保育所に転職して、余裕を持って働いている保育士さんも大勢います。

あなたのちょっとした行動一つが、あなた自身の人生を大きく変えるキッカケとなるかもしれません。

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